ピアノ練習方法・上達法〜モチベーション向上計画その1:目標の曲・憧れの曲を作ろう〜 | ||
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〜モチベーション向上計画その1:目標の曲・憧れの曲を作ろう〜皆さんは「この曲が弾けるようになりたい」という目標の曲、憧れの曲はありますか? ショパンで言えば、幻想即興曲、革命のエチュード、英雄ポロネーズ、別れの曲などが、憧れの曲として挙げられることが多いですね。 ピアノを習い始めたばかりの子の場合は、「エリーゼのために」、「乙女の祈り」などが当面の目標であることも多いと思います。 しかしそのような曲を弾くには毎日ピアノに向かう日々を数年間続けなければらないわけで、 そうしているうちにピアノに向かう行動がマンネリ化して、数年間の長期に渡ってモチベーションを維持することが難しくなってきます。 僕も自分から「ピアノを弾きたい」と言って習い始めた人間ですが、練習自体は好きではなく、 進度も今一つで、小学校3〜4年生頃には中だるみというか、やる気を失いかけていました。 何度も言うように、僕がピアノを習い始めた時の最終目標はベートーヴェンの「エリーゼのために」を弾くことでした。 この曲を弾くだけならそう遠くない将来に実現しそうという実感があり、そこまで到達するのにあと何年かかるかは、あまり気にならない(関心がない) という状況でした。このように、遅かれ早かれ実現しそうな目標は、得てしてモチベーションアップには必ずしも結びつかないわけです。 しかし!僕の中で全てがひっくり返る出来事が起こりました。ショパンの英雄ポロネーズとの衝撃的な出会いです。 ショパンの英雄ポロネーズとの衝撃的な出会い 時は1982年、僕が小学校4年生のある時期でした(正確な時期は忘れてしまいました)。 父親がクラシック音楽愛好家でレコードコレクターであったことは前述した通りですが、その父親が何を思ったか、 自分のレコードコレクションの中から1枚のドイツ・グラモフォンのLP盤を取り出して、こういうのも聴いてみたら、と言って寝室のLPプレイヤーの前まで僕を連れて行って、 そこでこのLPレコードをかけました。そして父親はすぐにそこを出て行ってしまい僕がそこに1人、取り残された状態となりました。 レコードから流れてくるのはショパンのピアノ曲でした。華麗なる大円舞曲、ワルツ第7番(Op.64-2)、マズルカ第5番Op.7-1、マズルカ第47番Op.68-2、 プレリュード第3番ト長調、第5番ニ長調・・・ここまで曲名は意識していませんでしたが、流れていた曲目のラインナップは このようなものでした。そしてこの平凡な時間はそのまま終わるはずでした。ところが・・・ ガーン・ダダダダダダダッ、と力強く始まるものすごいピアノ音楽がその後に続きました。 不協和音を効果的に使った衝撃的な序奏の後、高らかに奏でられる優雅で力強い第1主題から入り、主題部がリズミカルで力強く技巧的に展開され、 高速で華麗な上昇音階、左手の力強く高速のオクターブ連続部と、最後の最後まで優雅で華麗でダイナミックな和音が連続・・・ 僕は後頭部を金槌で殴られたような衝撃で言葉を失い、その音の連続に打ちのめされました。ノックアウトでした。 「すごい、これは本当にすごい、何てすごい曲なんだ」と僕は感動と興奮で打ち震えて、声にならない声を出しました。 ピアノという楽器を1人の人間が弾いて、このような音楽が作れるという可能性は、僕のそれまでの経験では想像すらできないことでした。 この曲は一体どんな楽譜になっているのだろう、ピアニストはどのように弾いているのだろう(当時は現在のYou Tubeなどのように ピアニストの演奏の様子を見る手軽な手段がありませんでした)、この曲を書いたフレデリック・ショパンというのは、 一体どういう人だったのだろう、と尽きることのない興味と好奇心に目が輝いているのが自分でも分かりました。 僕はレコードの針をもう一度、その曲の手前の溝に落とし、そして繰り返し繰り返し聴きました。 何度聴いても飽きない、いやむしろ繰り返し聴くほどこの曲の素晴らしさに強く引き込まれていくのを感じました。 その場から離れるのが難しくなり、この人の弾く英雄ポロネーズは当時の僕にとって強い依存性を持つものでした。 このようにして僕はショパンの英雄ポロネーズと衝撃的な出会いを果たしました。 そして、この瞬間、僕はこの曲を自分でも弾けるようになりたいという熱い思いを胸に抱きました。 このようにして、僕は小学校4年生のこの時、ピアノ学習の最終目標は「エリーゼのために」から「英雄ポロネーズ」に置き換わりました。 僕は全音ピアノピースの最後の裏表紙にあるピアノピースの難易度一覧表を眺めるのが趣味だったのですが、 それを見ると「英雄ポロネーズ」は最高難易度のF(上級上)になっていました。 「エリーゼのために」は難易度B(初級上)ですから(この難易度一覧もあまり当てにならず参考程度にすべきものですが)、 僕のピアノ学習の最終目標がこの瞬間、はるか高いランクに格上げとなったのが分かると思います。 当時、英雄ポロネーズの両手で駆け上がる高速の音階を弾く夢を見たことがありますが、僕にとってそれは文字通り「夢」そのものでした。 僕はこの曲がどうしても弾きたくなり、家に置いてあった父親の「名曲解説全集」の中から英雄ポロネーズの部分を探し出し、 その譜例を見てみましたが、それはこの曲のほんの一部を抜粋したに過ぎず、全体像が全くつかめませんでした。 次第にどうしてもこの曲の楽譜が欲しくなり、親に買ってきてもらいました。 ピアノに向かって音取りしたのですが、♭4つの変イ長調の楽譜は当時の僕には難しすぎ、全く歯が立ちませんでした。 今後もピアノにおいて精進を続け、然るべき時が来るまで封印することとしました。 こうして英雄ポロネーズは僕にとって文字通り「夢の曲」となったわけですが、 それは僕にとって絶対に叶えなければならない夢で、「この曲を絶対に弾けるようになりたい、それまでは絶対にピアノをやめない」 と強く心に誓いました。 実はその少し後に、同じレコードのB面(裏面)に収録されている「革命のエチュード」にも衝撃を受け、 これも弾けるようになりたい憧れの曲となりました。 またピアノの発表会でよく「取り」に弾かれるショパンの「幻想即興曲」も僕にとって憧れの曲となりました。 これらは「憧れ」という点では英雄ポロネーズにはかないませんでしたが、少なくともあと数年はかかるという 遠い道のりの末に実現するという意味では、「目標」というよりも「憧れ」に近い存在でした。 こうして僕は小学生のこの時期に「憧れの曲」と出会い、ピアノを習う目標がより高いものへと昇華され、 モチベーションは上がりました。 ただその目標は当時の僕にとってはあまりにも遠く、その時、瞬間的に頑張ったからと言って少しも近づかないほど 遠い遠い憧れの存在であったため、日々の練習にそれほど強い気合いは入りませんでした。 従ってそれがきっかけで進度が格段に上がったわけではありませんでしたが、目指す目標が格上げされ、より高い目標を掲げながら ピアノに向かうことになったため、結果的には進度にも少しは良い影響があったのではないかと思います。 目標の曲・憧れの曲を持つことはモチベーションを向上させる上で重要 このように目標の曲・憧れの曲と出会うことでピアノに向かうモチベーションは格段に向上します。 何としてもこの曲が弾きたい、という目標の曲・憧れの曲がある方、それはどのような曲でしょうか? 是非、その曲に向かって精進を続けて下さい。 目標の曲・憧れの曲がまだないという方は、是非そのような曲を発掘して下さい。 名曲集のCDでも良いですし、ピアノの発表会が定期的にあるピアノ教室に通っている方は、 ピアノ発表会で上級の生徒が弾いている曲に注目して聞いてみると良いと思います。 そのような曲に強く心を動かされるものがあれば、それが皆さんにとって「憧れの曲」となる可能性があります。 色々な曲を聴いて、曲の知識を増やしていくことで、憧れの曲は必然的に発掘されると思います。 それがピアノを続けるコツ、モチベーションを高めるコツです。
初稿:2017年7月4日
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