ピアノ練習方法・上達法〜右ペダル(ダンパーペダル)の使い方〜 | ||
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〜右ペダル(ダンパーペダル)の使い方〜ピアノのペダルの中でも右ペダル(ダンパーペダル)とその使い方は特に重要であるため、こうして別の章を設けて詳しく説明することとしました。 このペダルを踏むとダンパーが弦から一斉に離れます。これがこのペダルの機能です。 演奏する際に右ペダルを使ったことのない初心者の方も、「このペダルは何だろう」と気になって、試しにペダルを踏みながら鍵盤を押したことのある方が大半だと思いますので、 このペダルを踏むと音が鳴り続ける、音が響くというのは経験的に知っていると思います。 ペダルを踏まない状態の場合、各鍵盤に対応するダンパーは各弦に完全に接触した状態です。この状態で打鍵するとハンマーが弦を打った後、一度離れますが、 打鍵した後、そのまま鍵盤を押し続ける限り、ダンパーは弦から離れた状態が保持されるため、その音は減衰して消えるまでなり続けます。 しかしその途中で鍵盤から指を離すと、再びダンパーと弦が接触した状態に戻ります。ダンパーが弦に接触すると弦の振動はすぐに止まってしまうので音は消えます。 ところが、右ペダル(ダンパーペダル)を踏むと、全てのダンパーが一斉に弦から離れます。 この状態で鍵盤を打鍵するとハンマーが弦を打つ一瞬だけ弦と接触するだけで、その後ダンパーは弦から離れた状態ですから、 その音は減衰して消えるまでなり続けます。 つまり右ペダルを踏んだ状態で鍵盤を叩くと、打鍵が一瞬だけであっても、ペダルを踏み続ける限りその音は減衰して消えてしまうまで鳴り続けます。 ペダルを完全に離せばそこでその音は消えます。このようにこのペダルの機能そのものは単純ですが、 このペダルの使い方が実は最も奥が深く難しいものと言われ、演奏芸術においては複数の異なった目的で使われます。 これはピアノの経験が豊富な人はほぼ暗黙の了解事項、半ば演奏本能として身体にしみ込んでいて、ほとんど無意識のうちに 正しい踏み方を実践しているようですが、それを改めて意識化して言葉で説明するのは結構難しいと思います。 ここでは僕自身の経験をもとに、ダンパーペダルの実際の使用目的を 系統立てて言語化することを試みます。 ダンパーペダル総論: まずダンパーペダルの総論を先に説明します。ここではダンパーペダルを単に「ペダル」と略記します。 ピアノ学習がまだ進んでいない初心者の中には演奏中にペダルを使ったことがない方もいると思います。 僕自身も小学生のある時点まではペダルを使う曲を弾いていませんでした。 しかし本格的なピアノ演奏はペダルを踏んだ状態が基本だということをまず初めに強調しておきたいと思います。 皆さんが大好きなショパンを始めとしたロマン派以降のピアノ曲の場合はなおさらです。 つまりピアノ演奏におけるペダルの使い方については、「ペダルをどこで踏むか」ではなく「ペダルをどこで上げるか」がポイントと言い換えられます。 試しに皆さんが大好きなロマン派のピアノ曲をペダルなしで弾いてみると、ほとんどの作品はピアノ曲としての体を成さなくなることに気づくと思います。 何故「体を成さなくなる」と感じられるかを意識化して言語化すると、数点の異なる理由が見えてきます。 これがそのままペダルの存在意義、使用目的に直結します。 まず第1にペダルを全く使わないと音と音が「ブツ切れ」になります。第2に音の響きが直接的で含みがなく音楽性に乏しい音色となります。 このことを解消するのがペダルであり、ここから自ずとペダルの効用が演繹的に導き出されます。 音のブツ切れを解消することは大きく分けると、「音が保持される」、「音どうしが滑らかに接続される」、「音の均質さが得られる」の3点に分かれます。 これらは似ているようで異なる概念であり使用目的としては異なるものです。 また「音の響きが直接的で含みがなく音楽性に乏しい音色」を解消するということは、つまり「豊かな響きを得る(音色に色彩感を与える)」、 「音の余韻を残す」という効果が上がることが分かります。 以上から、右ペダルの効用は以下の5点に分類されると僕自身は考えています。
右ペダル(ダンパーペダル)の役割・目的
1. 複数の音を保持する・混ぜ合わせる 「あれ?このペダルは大きな音を出す目的では使わないの?」と疑問に思われた方ももしかしたらいるかもしれませんが、 個人的には右ペダルは物理的な音量を得るという単独の目的で使うことはまずないと考えています。 豊かな響きを得るために右ペダルを踏むことも多く、それが結果的に大音量となることは多いですが、これはあくまで結果です。
1. 複数の音を保持する・混ぜ合わせる
2. 音どうしをつなげる(スラー)・保持する
3. 音の均質さを得る
4. 豊かな響きを得る・音色に色彩感を与える
5. 音の余韻を残す 以上、右ペダルの5つの基本的な方法について何となく理解できたでしょうか。 音色のコントロールについては、かなりハイレベルで、これについて説明しようとすると、それだけで数ページ以上は必要になりそうですので、 それらについては別のページで詳しく説明することとします。 ここでは、右ペダルの最も基本的な使用方法として、「1. 複数の音を保持する・混ぜ合わせる」に絞って、 ペダルを踏みかえるタイミングの原則について詳しく説明したいと思います。
右ペダルを踏みかえるタイミングの原則〜何より大切なのは耳で聴いて判断すること〜 楽譜を見ると右ペダルの記号が記載されていると思います。 右ペダルは踏んだ状態が基本で、どこでペダルを離すかがポイントという話をしましたが、 明らかに右ペダルが必要な部分でも、ペダル記号が書かれていない楽譜をよく見かけます。 これと関連して「ペダルの記号が書かれていない部分でペダルを踏んでもよいのか」という質問もよく受けますが、 僕自身は踏んでしまって問題ないと思います。というより自分の耳で聴いてペダルが必要と判断すれば、 たとえペダル記号が記されていなくてもペダルは踏むべきです。 同じ曲の同じ個所でペダルを踏むべきかどうか、そしてペダルの踏む深さや踏みかえのポイントは 楽器によっても違いますし、演奏する場所によっても違います。また同じホールで演奏するにしても、 その時の温度や湿度による楽器の状態、ホールの客席の聴衆の人数によっても残響の程度が大きく異なるため、 それに応じてペダルの踏み方、使用頻度も変わってきます。 このように、ペダルの踏み方は曲の同じ個所でもケースバイケースで様々に変化するため、 一概には言えないのですが、ここでは、それを前提とした上で、大原則について説明したいと思います。 右ペダルを踏みかえるタイミングは、タイトルに記した通り、耳で聴いて判断することが大切です。 その際のポイントは、「音がきちんと保持されていて、切れ切れになっていないこと」、「音が濁っていないこと」の2つです。 曲の進行に伴い、和声(ハーモニー)は絶え間なく変化しますが、変化の前後でペダルを踏み続けたままにすると、 2種類の和声が混在して濁った不協和音になってしまい、耳に不快な音となってしまいます。 こうなることを避けるためにペダルを踏みかえるわけです。 つまり原則としては和声が切り替わるところがペダルを踏みかえるポイントです。 和声Aから和声Bに変化する箇所でペダルを踏みかえる場合を例にとって説明します。 この場合の最も適切な踏みかえタイミングは、和声Aが完全に終了し、和声Bが鳴り始めた瞬間です。 和声Aから和声Bに切り替わる瞬間よりも、幾分遅らせて踏みかえるのが正しいわけです。 どの程度遅らせるのが良いかは、やはり耳で聴いて判断することになります。 前述したように音が途切れずに、しかも濁っていなければタイミングは正しいことになります。 最初はなかなか難しいと思いますが、これも慣れればほとんど無意識で正しいタイミングで踏みかえができるようになります。
練習の時に右ペダルを使ってもよいか? この質問もよく受けますが、結論から先に言えば「使ってもよい」、もっと言えば「使うべき」というのが僕の持論です。
右ペダルを踏む深さはどうすればよいか?
初稿:2016/02/03
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