ヴラディーミル・アシュケナージ(Vladimir Ashkenazy、1937〜、旧ソ連→アイスランド) | |||||||||||||||||
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主な実績: 1955年第5回ショパン国際ピアノコンクールに、アダム・ハラシェヴィッチに次いで第2位受賞 1956年エリザベート王妃国際コンクール・ピアノ部門で優勝 1962年チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門で優勝(イギリスのジョン・オグドンとともに同時優勝) 圧倒的なキャリアを築き上げて世界を股にかけ、指揮にピアノに 超過密スケジュールをこなす小柄にして偉大な芸術家ヴラディーミル・アシュケナージ。 それはまるで、人間に不可能という字がないのではないかと錯覚させるほどの万能さです。 アシュケナージの名が世界中に知れ渡るきっかけとなったのは、やはり第5回ショパンコンクール でした。彼がコンクール予選で弾いた超特急のテンポのOp.25-6の3度のエチュードは、 涼しげで正確無比な演奏だったようで、並み居る審査員、ワルシャワの聴衆を驚かせたと言われており、 現在でも語り草になるほどの超絶的な演奏のようです。5分代で弾き切った快速の英雄ポロネーズも 18歳の若者らしい気迫の漲る演奏で、他を圧倒していました。このように実力では他を圧倒していた にもかからわず、最終的には、ポーランド出身のアダム・ハラシェヴィッチが優勝に輝き、彼は 第2位受賞に終わりました。それを不服とした審査員の1人、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが 審査結果にサインしなかったというのは、今ではあまりにも有名な伝説になっています。 この審査結果は、ソ連・ポーランド間の政治的背景・因縁が原因だったと言われています。 1956年には、エリザベート王妃国際コンクールで優勝、 1962年には第2回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門でイギリス出身のジョン・オグドンと第1位を分け合い、 その演奏キャリアの幕開けとなりました。 アシュケナージのピアノ演奏の最大の特徴はその真摯で真面目な演奏姿勢です。超絶技巧の持ち主では ないにもかかわらず、圧倒的に広いレパートリーを持ち、完結させた全集企画の数では古今東西の ピアニストで彼の右に出る人はおそらくいないでしょう。彼は大変な努力家で、1つ1つの作品に 全精力を注いで、それらの作品からその魅力を最大限に引き出そうとする姿勢は、まさに「ピアニストの鏡」 と言えます。 そのアシュケナージが得意としている作曲家の1人がショパンであり、彼は1971年から足掛け15年 に渡って、英デッカ(ロンドン)にオーケストラ付の 作品を除いた全てのショパンの作品を録音し、「ショパン全集」を完成させています。 一般に認識されない小品や習作、それに数ある歌曲の伴奏まで、ショパンのピアノ音楽のほぼ全てを完全に 網羅した全集で、現在「ショパン全集」と銘打つものの中で最も完全型に近いのが、 アシュケナージの全集です。 それだけでなく、このショパン全集では、彼の真面目な演奏スタイルにより、どんな取るに足らない 作品もおろそかに扱わず、細部まで丁寧に演奏していること、そしてその結果として、演奏の水準に ほとんどムラがないことは特筆すべきことです。 実に細部まで美しく彫琢された、現代的なすこぶる明快なショパン演奏です。 この全集はその意味でも、最も完全型に近いと 言えます。 磨きぬかれた輝かしい音色、ニュアンスに富んだ表現力、優れた音楽性、筋のよい安定したテクニック と、あらゆる面において現代のピアニストの水準を上回るオールラウンドプレイヤーのなせる技と言えるで しょう。 しかしそれでもなお、彼の演奏に満足していない人も大勢います。これは僕も感じていることですが、 彼の演奏は、時として作品の上っ面をなぞっただけの悪い意味での模範的演奏となってしまっている ものがあるのも事実でしょう。 とくに最近の彼の演奏は、70年代の鋭敏な感性による非の打ちどころ のない演奏とは違い、温厚で万人受けする、いわば「八方美人」的な演奏になってきていると感じて いるのは僕だけではないと思います。 特に彼のピアノの最大の欠点と僕が思うのは、ノンレガートの音の不揃いとオクターブ連打等の 強奏での歯切れの悪さです。緊迫感の欲しいところでその音楽の持つ密度が発散してしまう傾向が あるのはそのためでしょう。 とはいうものの、この人の弾くショパンは、現代人の求める「ショパンらしさ」に一番近いように 感じます。アシュケナージが好きかどうかは聴き手の音楽的嗜好に関わってくると言えます。 最近は指揮の活動にウエイトが移ってしまい、ピアノ音楽ファンの僕としては残念です。 ピアノオンリーの活動を再開し、僕達を唸らせる演奏を聴かせて欲しいのですが…
アシュケナージ・ディスコグラフィー
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