第15回ショパン国際ピアノコンクール(2005年) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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★2015年ショパンコンクール優勝者のライブ録音★ ピアノ:チョ・ソンジン
★第17回ショパン国際ピアノコンクール全記録 2015年 12月号 [雑誌]★
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1. 結果
※第15回ショパン国際ピアノコンクール特集掲載雑誌
今回から選考方法が大幅に変更 また今回のコンクールから、選考過程が一回減ったのも大きな変更点です。 前回までは、予選3回、本選1回の計4回の選考によって最終順位が決定され、本選出場者は基本的に6人、 その時点で入賞者が事実上決定するという仕組みしたが、今回からは、予選の回数を1回減らし、 予選2回、本選1回の計3回の選考となりました(予備審査を除いて)。さらに本選出場権利は従来の6人から倍の12人に 与えられ、本選での演奏(ワルシャワフィルとのピアノ協奏曲)によって最終的に上位6人に賞が与えられるという制度に 変わった点も大きな変革です。出場者にとっては、本選出場までの切符を獲得するまで通過しなければならない予選の数が 減ったことを喜びたい気持ちもあるかもしれませんが、本選まで残ったからと言って即入賞とはならず、最後の最後まで 入賞をかけて闘わなければならない点が過酷さを増しているという見方もできます。 このように今回から選考形態が大幅に変更されたわけですが、これは単純にコンクール運営のコスト削減のためだそうです。 しかしそのために出場者の負担が増えたという見方もあります。今回の選考で素晴らしい才能が従来以上にきちんと発掘、評価 されたか、才能はありながら涙を飲んだ参加者はいなかったか、その逆はなかったか、審査の公平さと基準は保たれていたか、 など、今回の選考形態と最終結果を照らし合わせ、今回の利点は次回以降に残し、問題点は再検討をし、さらに優れた選考形態を 追求していっていただきたいと思います。
優勝は、ポーランド期待の新星ラファウ・ブレハッチ
ネットで実況中継の視聴が可能に! コンクール期間中、10月3日から10月20日までのこのサイトのアクセス総数は、36万を超えたとも言われています(この数字は 「驚異的」という意味で引き合いに出されたようですが、僕は逆にこの数字を 見たときは意外に少ないという印象を持ちました。皆さんはどう思われたでしょうか?)。国別に見た場合、 日本からのアクセス数がもっとも多く、全体の31.6%、次いでポーランドが21.8%、韓国の14.5%となっている ようです(「音楽の友」12月号、「MOSTLY CLASSIC」2006年1月号より抜粋←iTVPの発表)。 ただ、実況が見られると言っても、通信状況(PCの処理速度も影響していますが)が芳しくなく、数秒ごとに画像、音声が停止、 接続が切断され、そのたびに再接続を試みるという状況が頻繁に起こり、演奏を1曲通して聴くには程遠い状態でした (少なくとも僕は)。さらに出場者の演奏は日本時間の真夜中になることが多く、多くの日本人ショパンファンにとっては 過酷な状況が続いたともいえます。次の日、仕事や学校がある人は、泣く泣く諦めて床に就いた人も多かったのではないか と思います。それでも、「5年に1度のショパンコンクール、しかもネットで実況が見られるこの大事な機会、絶対に逃すわけ にはいかない」とばかりに目にマッチ棒を立てて(?)、必死にPCのディスプレイを食い入るように見ていた、という筋金入りの ショパンファンの方も多かったのではないか、と想像しています(実は僕もその1人でした)。 次の日、眠い目をこすりながら職場や学校に向かった方も多かったのではないでしょうか? ただ、どうしても接続状況が芳しくないこともあったので、僕の場合、諦めることも多かったです。 しかし、たとえ断片的にではあっても出場者の演奏の「音」をリアルタイムで聴くことができるというこの環境と、この粋な計らいを していただいたポーランドの放送局(iTVP)には、ショパンファンの1人として限りない感謝の意を表したいと思っています。 次回の2010年には インターネットの技術、環境はさらに発展しているでしょうし、配信側の体制もさらに改善・強化され、整えられるでしょう から、次回以降はさらに快適な環境でショパンコンクールが 楽しめる状況になっていると思いますし、そのことを強く期待しています。
ネット放送で聴いた出場者の演奏から オーケストラの長い序奏の後の出だしの和音から非常にくっきりとしたバランスのよい美しい音に驚きましたが、 さらにその後の第一主題からその自然で高貴な歌に強く惹きつけられました。 そこから先は、もうブレハッチのピアノの世界に我を忘れる幸せのひととき…これは、ショパンの作品の魅力と演奏者の ショパン弾きとしての 才能との 間に「共鳴」、「共振」が起こったときにのみ起こりうる非常に稀な現象ではないかと思います。ブレハッチの演奏は特に強い 自己主張や華やかさ、ヴィルトゥオジティがあるわけではないのですが、それに引き換えて非常にくっきりとしていながらも 繊細でマイルドな音色で、ショパンの音楽の持つ本来の美しさや魅力をごく自然に引き出していく、正統派中の正統派の演奏と 思いました。コンクールでは、審査員の注意を引くために強弱やテンポのメリハリ(デュナーミクやアゴーギク)や技術的な 華やかさが時に大きな効果を発揮するのも事実で、実際、今回の3位以下の入賞者の中にはそのような演奏で大きな効果を上げた ピアニストもいたようですが、ブレハッチの演奏はそれとは全く別の次元にあったように思われました。 こういう演奏スタイルで聴く人を惹きつけるのは非常に難しいことだと思いますが、ブレハッチの場合は、音色の美しさや エレガントな上品さ、気品、清潔感、繊細な詩情と言ったショパンの音楽の本質的な魅力を引き出す表現の「質」が 他の参加者を大きく引き離しており、ショパンの音楽の本質に最も近い演奏をしたという点で、全く文句のつけようの ないダントツの優勝だったのではないか、と思います。 ところで、ショパン国際ピアノコンクールの存在意義については、コンクール創始者イェージー・ジュラヴレフ教授から 現在の審査委員長アンジェイ・ヤシンスキ氏まで受け継がれてきている「伝統」があり、「ショパンの音楽の本質に最も近づいた ピアニストを最も高く評価する」という考え方によって特徴付けられます。当たり前のことのようですが、これはショパン コンクールが他の国際ピアノコンクールと一線を画する非常に重要な基準ではないかと思います。というのも、 最近の腕の立つ若手ピアニストは、ショパンの音楽を 強弱の幅、テンポの幅を用いた演奏効果で必要以上に華やかで「聴衆受け」する演奏をする傾向があると言われていますが、 時としてそれがショパンの音楽の本質から遠ざかってしまう場合が往々にしてあるようです。それでもショパンコンクール 以外のピアノコンクールでは、ピアニストとしての「並外れた力量」として非常に高く評価される場合が多いようですが、 ショパンコンクールでは、「ショパンらしいショパンを求める伝統」を、創始以後現在に至るまで頑なに守り続けてきている ようです。ショパンコンクールで求められている演奏は、何よりも、ショパンの音楽の真実に最も近づいた自然な演奏と 言われます。つまり不自然さや作為、恣意性が全くなく、全ての音符と音符の関連が、本来あるべき姿で必然性をもって 立ち上ってくる極めて自然で洗練されたエレガントな演奏です。これは気品、優雅さ、上品さ、繊細さ、自然さとが 絶妙のバランスで渾然一体となって生まれ出る奇跡の瞬間にのみ起こりうることで、「ショパン弾き」として生まれついた 数少ないピアニストによって初めて可能となるようです。今回優勝のブレハッチは、このような点でまさしく、ショパン弾き としてあるべき理想の姿を示し、ショパンコンクールが求める真のショパン弾き(ショピニスト?ショパニスト)の理想像に 一番近かったという意味では、全く文句のつけようのない優勝ではないか、と僕は思いますし、数多くの批評家もそのように 絶賛しています。 ショパンコンクール始まって以来の「第2位該当者なし」という結果は、トップのブレハッチと 次のイム・ドンヒョク(イム・ドンミンと同点だそうです)との差に開きがあったため、とも言われており、このことは 取りも直さず、ブレハッチがダントツであったことを意味します。「第5位該当者なし」という結果も同様の理由による そうです。ブレハッチは、コンクールの副賞であるポロネーズ賞、マズルカ賞、コンチェルト賞を総なめにし、 それ以外の規定外の副賞も数多く受賞するなど、破格の評価を受け、輝かしい栄冠を手にしました。 果たして彼は今後どのように成長していくのでしょうか?今後のブレハッチの活躍には大きな注目が集まります。
ブレハッチ裏話〜浜松国際ピアノコンクールの出場権
ドキュメント
イム・ドンヒョク〜本選演奏中のハプニング?
2人の日本人、関本昌平さんと山本貴志さんが見事第4位入賞
コンクール推奨のエキエル版(ナショナル・エディション)の使用状況は?
次回のショパン国際ピアノコンクールは2010年〜ショパン生誕200年 最終更新日:2005/11/26
※以下は最終日の3人の演奏に対する僕自身の感想です(2005年10月22日更新内容)。 第15回ショパン国際ピアノコンクールも日本時間の10月22日早朝に終了しました。接続、通信状況がよかったので最終日の3人の 演奏はほとんど聴くことができました。 1人目のヤロシンスキーの演奏は音色は美しかったのですが、これといった特徴もなく、 アピール度が足りないようで目立たないまま終わってしまってちょっと残念でした。強いて言えば第2楽章が美しく、評価できる と思いました。よいものを持っているようなので、そこにメリハリとアピール、存在感が加わってくると一回りスケールの 大きな、説得力のある演奏になっていくように感じられました。 2人目のイム・ドンミン(イム兄弟の兄のほう)の演奏は、力でぐいぐい引っ張っていく男性的で迫力ある エネルギッシュな演奏で、パンチのある演奏で完成度も高かったと思います (第3楽章の冒頭で大きく音を外してしまったせいか、冷静さを失ってしまったようですが、最後は見事に 立ち直ったようです)。ただ音色の魅力には乏しいようで、硬く詰まったような音色がショパンの詩情にマッチ しない部分もあるようにも感じられました(個人的な意見で申し訳ないですけど…)。今後、ショパンを主要レパートリーに するためには、もう少し音色の魅力に磨きをかける必要があるようにも感じられました。タイプ的には、ベートーヴェンや ブラームスのほうが彼本来の資質にマッチするのでは?というのが正直な感想でした。 そして3人目のブレハッチ…。まず上品なタッチから紡ぎだされる鳥肌が立つほど美しくて甘い音色、洗練された テクニックが冒頭から惹きつけて放さない魅力を放っていたのに驚きました。その気品と清潔感が漂う極上の演奏は、 ツィマーマンの再来かと思わせるに十分!ただただ聴き惚れるのみ、という感じでした。そこにある種の余裕すら漂って、 これがコンクール本選の演奏だということを、しばし忘れさせて、聴く人に幸せなひとときをもたらしてくれる、 そんな演奏でした。全ての本選出場者の演奏を聴いたわけではないのですが、この人だけは別格!と思わずには いられない、真のショパン弾きの演奏に久々に巡り合えたことに、しばし感慨に耽りました。 ひたすら美しいものの、訴えかけるものがもう一つない、と思われる向きもあるかもしれませんが、 ショパン弾きを世に送り出す「ショパン国際ピアノコンクール」の存在意義を考えた場合、勝者は、この人以外にありえない のではないか、 とすら思えてくるほど僕にとって魅力の多いピアノ協奏曲(1番)でした。第15回ショパンコンクールの覇者、 ラファウ・ブレハッチの今後に期待したいと思います。
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