ショパン演奏
〜ラフマニノフ〜
 
エレジー変ホ短調Op.3-1
演奏時間 5' 13''

「エレジー」は、日本語では「悲歌」あるいは「哀歌」と訳すそうで、その名の通り、ラフマニノフ特有の泣き節が満載の 1曲です。暗く悲しく心を揺さぶる旋律と中間部後半のドラマティックな展開が聴く人を惹き付ける、ラフマニノフの若き日の名作です。 技術的には、主部は非常に広範囲に渡る左手の伴奏音型が多少難しいとも言えますが、ここは弾き慣れれば何ということはないです。 中間部は主旋律が左手に移り、右手にゆっくりしたさざなみのような重音のトリルがありますが、 これも指がしっかりしていれば特に難しいことはなく普通に弾けるようになります。 ラフマニノフの作品としては非常に易しい部類に入る曲なので、初ラフマニノフとして曲をお探しの方にはお奨めの1曲です。

パガニーニの主題による狂詩曲〜第18変奏
演奏時間 2' 36''

この曲はパガニーニの有名な主題をテーマとした24の変奏からなり、原曲はピアノと管弦楽のための、ピアノ協奏曲的な作品です。 名人芸的ピアニズムを堪能できる名曲としても知られていますが、中でも一番有名なのがこの第18変奏で、 この曲の最大の聴きどころだと思うので、あえて取り上げてみました。ラフマニノフ独特の哀愁漂う旋律、ハーモニーが 心に響く部分ですね。この演奏は、ピアノとオーケストラの各部を自分でアレンジして、色々な声部、要素を 欲張りなくらい盛り込んだ編曲にしてしまいました。その分、演奏もいっぱいいっぱいです(苦笑) でも、皆さんにもこの曲の良さが伝われば、と思いながら弾きました。

前奏曲第1番嬰ハ短調Op.3-2「鐘」
演奏時間 4' 27''

ラフマニノフの前奏曲の中で最も人気の高い曲です。「鐘」あるいは「モスクワの鐘」のタイトルで親しまれている名曲で、 モスクワのクレムリン宮殿の荘厳な鐘の音にインスピレーションを受けたと言われています。主部はレントという指示があるように 遅いテンポで暗く荘厳で分厚い和音が連続しますが、中間部は同じ嬰ハ短調という調性ながらアジタートで一転して速いテンポになり、 中間部最後の左右両手の和音の交互連打がすさまじい演奏効果を上げます。この中間部はやや手に馴染みにくく難易度が高いと 感じました。主部の再現は、何と4段譜で書かれていて、地響きを立てるかのような分厚い和音を両手で鳴り響かせ、 ここでも演奏効果を上げる仕組みが施されています。最後は余韻を残しながらフェードアウトするように終わります。 この曲はラフマニノフの出世作の1つでもあり、ラフマニノフ自身、演奏会でも好んで取り上げていたようです。

前奏曲第5番ニ長調Op.23-4
演奏時間 4' 14''

ラフマニノフの前奏曲も24曲からなりますが、この曲はその中で特に好きな部類に入ります。 (他に特に好きなのはOp.23-5,Op.23-6,Op.32-5,Op.32-12などです) この曲は、舟歌風のリズムに乗って、ゆったりとした美しいニ長調の旋律が心地よく流れる曲ですが、技術的には地味に難しい曲です。 伴奏部は左手だけでなく多くを右手で受け持つことになりますが、その際、自然な運指を独自に考えること、旋律が埋もれないように やや目立った音量、音色で弾き分ける必要があることや、後半に跳躍や音域の広い分散和音があることなど、 意外に難しい課題が盛り込まれています。

前奏曲第7番変ホ長調Op.23-6
演奏時間 3' 10''

ノクターン風の流麗な旋律が魅力的なプレリュードです。左手の16分音符の伴奏音型がゆっくりと絶え間なく続く中で、 オクターブを基本にした右手の美しい旋律が流れていきます。本当に「夜」を思わせる曲調ですが、ショパンのノクターンと違い、 ラフマニノフらしい作風が随所に見られます。特に左手の16分音符の絶え間なく続く音型は、いかにもラフマニノフらしく、 規則性があまりないため、例のように運指を決める作業から入る必要があります。譜読みと暗譜(弾き込みによる定着も含めて)に 多少時間がかかる曲ですが、ラフマニノフの曲としては技術的にはかなり易しい部類に入ると思います。

前奏曲第23番嬰ト短調Op.32-12
演奏時間 2' 23''

ラフマニノフの前奏曲の中では比較的よく知られている作品です。右手の静かな高速の分散アルペジオの伴奏型が 水面の波紋を連想させ、左手で何とも物悲しい旋律が奏でられます。中間部は後半に向けて盛り上がりを見せ、 コーダ直前にも一時的な高揚を見せますが、全体として印象派を連想させる細かく薄い響きが何とも繊細な作品です。 技術的にはラフマニノフにしては易しい部類に入ると思いますが、もつれやすい音型が結構多いのではないかと思います。 アルペジオやトリル、伴奏音型などもきれいに粒が揃わないとこの曲の良さが全く出ないという意味では、 ある程度のレベルに達した人にしか弾けない曲とも言えそうです。

※ラフマニノフで今後アップ予定の曲
前奏曲第16番ト長調Op.32-5
前奏曲第6番ト短調Op.23-5