プレリュード第1番ハ長調:演奏時間 0' 38''
ショパンの24の前奏曲の最初の曲です。楽譜にして1ページの非常に短い曲で、調性もハ長調のままで音型もほぼ一定ですが、 その中で♯を多用しつつハ長調の枠内で自在に音楽を操ることができるショパンの才能に改めて驚かされる曲です。 24の前奏曲は通して聴かれることが多いので、是非、皆さんにも24曲通して聴いてほしい曲です。 その中でこの曲がどのような位置づけなのかを理解すると、この曲を演奏する際、さらに内容が良くなると思います。
プレリュード第4番ホ短調:演奏時間 1' 48''
ショパンの葬儀の際に、オルガンで演奏されたと言われる憂鬱なプレリュードです。 左手の連打による伴奏の上に、右手が単音の旋律を奏でるという音楽からは、「雨だれの前奏曲」同様、 「雨」を連想させます。この曲は、楽譜にして1ページの短い曲で、技術的にも非常に易しいですが、 雰囲気を出すのは非常に難しいです。左手の和声が変わる毎にテンポや強弱、音色に微妙に変化をつける必要があるようです。
プレリュード第6番ロ短調:演奏時間 1' 50''
プレリュード第4番ホ短調とともに、ショパンの葬儀の際にオルガンで演奏された憂鬱なプレリュードです。 右手の伴奏音型は単音連打を基本にしていて「雨」を連想させますが、旋律はほぼ左手が受け持つ形になっています。 「雨だれ」を連想させる短調の曲ということで、曲調としては第4番と似ていますが、第4番ほど和声の細かい変化や多彩さはなく、 始終、憂鬱な感情に支配されています。
プレリュード第7番イ長調:演奏時間 0' 45''
この曲は胃腸薬(この曲の「イ長調」という調性にかけたのだとか…)のテレビCMで昔から流れている曲ということで、 日本国民誰もが知っていると言っていいほどの超有名曲です。 難易度的にはショパンの曲の中でも1,2を争うほど易しい曲で、ショパン入門用の1曲としておすすめです。
プレリュード第11番ロ長調:演奏時間 0' 38''
この曲も一瞬で終わってしまうプレリュードですが、軽妙で上品な響きで詩情豊かな曲調が魅力的な1曲です。 この短いシンプルな1曲にも音楽性豊かな旋律とハーモニーに溢れていて、 ショパンの才能に改めて驚かされます。個人的には好きな曲です。
プレリュード第13番嬰へ長調:演奏時間 2' 43''
ノクターン風の甘美でロマンティックなプレリュードで、個人的に好きなプレリュードの5本指に入る曲です。 揺れ動く海の波を思わせる左手の伴奏に乗って、和音を基調とした右手の旋律が美しく歌われる曲で、 何となくマジョルカ島への希望に満ちた船旅を連想させる曲調と個人的には思います。 それにしても、本当に美しい響きで、何度聴いてもいい曲だなぁ…とため息が出るほどです。
プレリュード第15番変ニ長調:演奏時間 4' 52''
前奏曲の中では一番有名な曲ではないかと思いますが、実はあまり人気がない曲のようですね。 恋人のジョルジュ・サンドとともに逃避行したスペイン沖のマジョルカ島で作曲されたとされています。 その時期は雨ばかり降っていたようで、暗い僧院の中で憂鬱に外の雨を眺めながらピアノに向かっているうちに、 このような素晴らしい曲想を思いついたことは想像に難くないですね。 特に左手の変イ音の連続が雨の滴の落下をイメージさせますし、右手の旋律も潤いに満ちていて、 音によってここまで雨の風景を描写できるショパンの才能にも驚かされます。
プレリュード第17番変イ長調:演奏時間 3' 07''
プレリュードの中でも特に音楽性豊かな名曲で、個人的には特に好きなプレリュードです。 曲の中ほどは多様で意外な転調と臨時記号の嵐となっていて感興豊かな音楽ですが、 和声の変化は複雑多様で、これらを微妙なルバートと強弱変化によって表現する必要があり、 かなり高度な音楽性が必要になる部分だと思います。 技術的には、左右両手の1指が頻繁に重なり合う(交差する)ためにやや弾きにくく、決して易しい曲ではないです。 僕の演奏がこの曲の本当の良さを引き出せているかどうかは分からないですけど、この曲、本当にいい曲ですよ。
プレリュード第20番ハ短調:演奏時間 1' 43''
プレリュードの中では7番に次いで、技術的にも特に易しい曲です。 曲調は葬送行進曲風で、荘厳、陰鬱な和音がほぼ等間隔で規則正しく連続する単純な曲です。 曲の構成はABB'ですが、BとB'の違いは最後の和音を除くと強弱記号のpとppのみです。 また、第3小節目の4拍目の最高音はホ音に♭が付くかどうか議論になっているようですが、 ここでは一般的となっている♭付きで演奏しています。
プレリュード第24番二短調:演奏時間 2' 32''
ショパンの24の前奏曲の最後を飾るにふさわしい壮大な難曲です。 これは偶然だと思うのですが、ショパンの前奏曲は8の倍数(8番、16番、24番)が エチュード並みの三大難曲プレリュードとも言われていて、それぞれ異質の難しさです。 この24番はまず左手の伴奏音型が普通の手の大きさの人にとって届かない幅の広がりがあり、 正確な跳躍を連続させなければならない点がまず大きな難関となります。 しかも跳躍の幅は一定せず、時に13度の跳躍が要求されます。 コツとしては第2指あるいは第3指を所定の音を弾いた後も、その位置を保ち、 それを支点にして尺を取るように最後の第1指の音を取るような動きをすると跳躍の正確さが上がります。 しかもその跳躍をこなしながら、右手で急速の上昇音階、アルペジオ、下降アルペジオ、 あるいは最後の方に出てくる3度の下降半音階パッセージを弾かなければならない点がこの曲の最大の難しさです。 左手単独、右手単独でそれぞれ弾けても、両手を合わせると左手が慌ただしく動く中、右手のこれらの速いパッセージを弾くのは また別の難しさがあり、これはもう何度も弾いて体で覚えるより仕方のないところです。 この曲の終わり方も特殊で、最後は最も低い二音を3回強打して終わります。 穏やかに始まった24の前奏曲はこうして劇的な幕切れとなります。
プレリュード第25番嬰ハ短調Op.45:演奏時間 3' 55''
ショパンの24の前奏曲からは外れてしまうため、演奏される機会の少ないマイナーな曲ですが、 個人的には、前奏曲の中では特にお気に入りの1曲です。 調性が不安定で目まぐるしく転調しますが、転調の手法が斬新で既にロマン派の枠組みを超えていて 最初に聴くとショパンの曲とは思えないという人も多いのではないかと思います。 調性だけでなく基本的な和声も斬新で、既に印象派の手法を先取りしたかのような印象も持ちます。 この世のものとは思えない極上の美しさを持つ和声に浸ることができるショパンの隠れた名曲の1つです。
プレリュード第26番変イ長調遺作:演奏時間 0' 43''
この曲もショパンの24の前奏曲から外れていて、25番に比べてもはるかにマイナーな曲で、 演奏される機会は皆無に等しい曲です。曲は40秒程度で終わってしまう非常に短い曲で、 曲の初めから終わりまで左右両手ともに16分音符が絶え間なく続く常動曲(無窮動曲)ですが、 この1曲の中にもクライマックスがあって、しっかりと聴きどころが作られています。